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契約書の原本が1部しかない!手元にないときのリスクと正しい対処法

■はじめに

「契約書って1部しか作らなかったけど、大丈夫?」 「原本を相手に渡してしまったけど、手元にコピーしかない…」

こんな状況に心当たりはありませんか?

契約書を締結するとき、枚数のことまで気が回らず、つい1部だけ作成してしまうケースは珍しくありません。また、「相手方に渡しておけばいい」と思い込み、自分の手元に何も残っていないという方もいらっしゃいます。

しかし、契約書の原本が1部しかない状態や、手元に原本がない状態は、さまざまなリスクを抱えています。この記事では、そのリスクと具体的な対処法をわかりやすく解説します。


■なぜ契約書の原本は2部作成するのが原則なのか

契約書は「証拠書類」である

契約書の最大の役割は、双方の合意内容を証明することです。取引の内容・金額・期間・義務などを文書化し、後から「言った・言わない」のトラブルを防ぎます。

そのため、契約書は原則として2部(または当事者の数と同じ部数)作成し、それぞれの当事者が1部ずつ保管するというのが実務上の基本です。

これを「相互保管」と呼びます。双方が同じ内容の原本を持つことで、どちらの手元にも正式な証拠が残ります。

1部しか作らないと何が起きるか

1部しか作成しない場合、どちらか一方しか原本を持てない状況になります。

  • 一方が原本を持ち、もう一方はコピー(写し)のみ
  • または、原本を「交互に保管する」ことにしているが管理が曖昧
このような状態は、後述するさまざまなリスクの原因になります。

■原本が1部しかない場合の主なリスク

リスク①:トラブル時に証拠力が弱くなる

原本とコピー(写し)では、証拠としての力が異なります。

裁判や交渉の場面で問題になりやすいのは以下のような状況です。

  • 相手方が「契約書の内容はこうだった」と主張してきたとき、コピーしか手元にないと反論が難しい
  • コピーは改ざんが容易なため、相手方から「本物かどうかわからない」と言われるリスクがある
  • 原本を持っている相手方が、内容を改ざんした書類を「これが原本だ」と主張してくる可能性がゼロではない
原本を持っていることは、それだけで「契約の事実」を強く裏付ける証拠になります。

リスク②:税務調査で指摘を受けるリスク

取引の証拠として、税務申告に関連する契約書の保存は法律で義務付けられています。

法人の場合、法人税法に基づき、契約書等の書類は原則7年間の保存が義務となっています(個人事業主も所得税法上の保存義務があります)。

税務調査の際に「原本がない」「コピーしかない」と説明すると、取引の実態に疑問を持たれるケースがあります。原本の保管は、税務上も重要な意味を持ちます。

リスク③:相手方の原本紛失で証拠がゼロになる

原本を相手方だけが持っている状態で、その相手方が原本を紛失してしまったら、どうなるでしょうか。

自分の手元にコピーしかなければ、契約の存在そのものを証明する書類が実質ゼロになってしまうリスクがあります。

契約書の紛失リスクと対応方法については、契約書を紛失してしまった時の対応の記事も参考にしてください。

リスク④:原本の内容を後から確認できない

取引期間が長くなると、契約書の細かい内容を確認したい場面が必ず出てきます。

  • 「契約期間はいつまでだったか」
  • 「このケースでの責任はどちらにあるのか」
  • 「支払い条件はどうなっていたか」
手元に原本がなければ、相手方に連絡して確認を依頼しなければならず、迅速な対応が難しくなります。

■「原本1部」になってしまいやすい典型的なパターン

実務でよくある「1部しかない」状況には、次のようなケースがあります。

  • 印紙代を節約しようとした:収入印紙は部数分必要なため、「1部にして印紙代を減らしたい」と考えた
  • どちらが保管するか決めずに片方が持ち帰った:締結後に「じゃあどっちが持つ?」となり、なんとなく一方が持ち帰ってしまった
  • 「コピーで十分」と思っていた:原本と写しの違いを知らず、コピーを渡して済ませた
  • 電子データのみで書面の原本を作らなかった:メール等でやり取りしただけで、正式な書面を作らなかった
なお、収入印紙の節約については、1部の原本を作って一方が保管し、もう一方にコピーを渡すという方法は適切ではありません。それぞれが正式な原本を持つことが基本です。

■手元に原本がない場合の対処法

対処法①:相手方に原本のコピーを依頼する

まず取れる対処として、相手方に「原本のコピー(写し)を提供してほしい」と依頼する方法があります。

コピーは原本と同等の証拠力はありませんが、契約内容を確認・記録するためには有効です。依頼の際は、コピーに「原本と相違ない旨」を相手方に記載・押印してもらえると、一定の信頼性が上がります。

対処法②:原本証明付きのコピーを取得する

相手方に依頼し、コピーに原本証明を付けてもらう方法があります。

原本証明とは、「このコピーは原本と同一の内容であることを証明する」という記載と署名・押印を行ったものです。これにより、コピーの信頼性を高めることができます。

ただし、この方法でも「原本を持っていない」状況に変わりはないため、可能であれば次の対処法を検討してください。

対処法③:契約書を新たに2部作成しなおす

最も確実な対処法は、相手方と合意のうえで契約書を2部新たに作成しなおし、それぞれが1部ずつ保管する方法です。

内容に変更がない場合は、「原本を再作成する」という位置づけで締結し直すことができます。変更がある場合は、変更覚書・追加覚書を使って正式に内容を更新することも選択肢の一つです。

再作成の際に、収入印紙が必要な契約書については、2部分の印紙を用意してください。

対処法④:電子契約への切り替えを検討する

書面での原本管理に課題を感じているなら、電子契約に切り替えることで、紙の原本を巡るトラブルをそもそも防ぐことができます。

電子契約では双方が同じデータを保有するため、「どちらが原本を持つか」という問題が生じません。電子契約・電子署名の基本については、電子契約・電子署名とは?の記事もご覧ください。


■契約書の保管そのものを見直すことも大切

「原本が1部しかない」という問題は、保管体制を整えることで今後のリスクを減らすことにつながります。

新しく契約書を作るときのルール

  • 契約書は原則2部作成し、双方が1部ずつ保管する
  • 締結時に「どちらが保管するか」を明確に決める
  • 保管場所(フォルダ・キャビネット等)を決め、誰が見ても分かる管理をする

すでにある契約書の管理を整える

現時点で手元の契約書をきちんと管理できているか、この機会に見直しましょう。

契約書の保管方法や紛失を防ぐ具体的な方法については、契約書・覚書の紛失を防ぐ保管方法の記事で詳しく解説しています。


■専門家に相談するとどんなことが解決できるのか

「手元に原本がない契約書があるが、どうすればいいかわからない」 「取引先との間で契約書を作り直したいが、相手方に何と言えばいいか」

このような状況では、行政書士等の専門家に相談することで、以下のサポートを受けられるのではないかと思います。

  • 現状のリスクを整理し、適切な対処法をアドバイス
  • 契約書の再作成・修正・追記(覚書の作成)
  • 相手方への依頼文書の作成サポート
  • 既存の契約書内容のチェックと問題点の洗い出し
なお、契約に関する法的紛争の解決(訴訟など)は弁護士の専権事項ですが、契約書の作成・内容確認・リスク整理などの業務は行政書士も対応することができます。個別の法律判断が必要な場面では、弁護士との連携をご案内することも可能です。

■まとめ

契約書の原本が1部しかない、または手元に原本がない状態は、以下のリスクをはらんでいます。

  • トラブル時に証拠力が弱くなる
  • 税務調査で指摘を受けるリスクがある
  • 相手方の紛失で証拠がゼロになる可能性がある
  • 必要なときに内容をすぐ確認できない
対処法としては、以下の選択肢を状況に応じて選びましょう。
  • 相手方に原本のコピーを依頼する
  • 原本証明付きのコピーを取得する
  • 契約書を2部作成しなおす(最も確実)
  • 電子契約への切り替えを検討する
「今さら聞きにくい」「相手方にどう切り出せばいいかわからない」という場合も、まずは専門家にご相談ください。はじま行政書士事務所では、契約書に関するご相談を承っています。

契約書のことで困ったら、気軽に相談してください

「これって自分で作れる?」「送られてきた契約書、このままサインして大丈夫?」そんな不安、一人で抱え込まないでください。

はじま行政書士事務所では、フリーランス・副業の方から中小企業まで、契約書の作成・レビューをお手伝いしています。

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