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契約書を再作成する vs 覚書で対応する|紛失・内容変更時の正しい使い分けを解説

■はじめに

「契約書が見当たらなくなってしまった……再作成したほうがいい?それとも覚書で補えばいい?」

「取引の条件を変更したいのだけれど、今の契約書はそのままにして覚書を作ればいい?それとも契約書を作り直すべき?」

こうした疑問を抱えたことはありませんか?

契約書にまつわるトラブルが起きたとき、あるいは契約内容を変更したいとき、「再作成」と「覚書」のどちらで対応すればよいか迷う方は少なくありません。どちらも法的には有効な手段ですが、使い分けを誤ると「変更したはずの条件が法的に反映されていない」「原本がない状態で紛争になった」といったリスクが生じます。

この記事では、契約書の再作成と覚書による対応それぞれの特徴を整理したうえで、「どちらを選ぶべきか」の判断基準をわかりやすく解説します。

■本文

そもそも「再作成」と「覚書」は何が違うのか?

まず、2つの方法の基本的な違いを確認しておきましょう。

契約書の再作成とは

契約書の再作成とは、現在の契約書を廃棄または失効させたうえで、あらたに完全な契約書を一から作り直すことです。再作成した新しい契約書がすべての合意内容を包括し、これが有効な契約書として機能します。

再作成のポイントは、以下のとおりです。

  • 契約書の全体をあらためて見直すことになる
  • 新しい契約書が締結された時点で、旧契約書は原則として効力を失う(または代替される)
  • 条文の追加・削除・修正を自由に行える
  • 契約書の内容がゼロベースで整理されるため、内容の明確性が高くなる

覚書とは

覚書(おぼえがき)とは、既存の契約書の一部を変更・補足・確認するために、当事者間で取り交わす書面のことです。覚書と契約書の違いについては別の記事でも詳しく解説していますが、覚書は「契約書はそのままで、この部分だけ変える(または確認する)」という場面で使います。

覚書のポイントは、以下のとおりです。

  • 元の契約書は存続したまま、追加・変更・確認だけを行う
  • 変更する条項や確認内容だけを明記すればよいので、手続きがシンプル
  • 元の契約書と合わせて読む必要があるため、複数書類の管理が必要になる
  • 変更覚書・追加覚書と呼ばれることもある

契約書を紛失したとき:再作成 or 覚書、どちらが正解?

契約書を紛失してしまった場合の対応については別記事でも詳しく解説していますが、ここでは「再作成か覚書か」という判断軸で整理します。

紛失時は原則として「再作成」が基本

契約書を紛失した場合、覚書では対応できません。覚書はあくまでも「既存の契約書の変更・補足・確認」をするための書面です。元となる契約書が手元にない状態で覚書だけを作成しても、「何を変更したのか」「元の合意内容は何だったのか」が書面上で確認できず、法的に不安定な状態になります。

紛失時に再作成を選ぶべき理由

  • 元の契約書の内容を書面として手元に持てる状態に戻せる
  • 万が一、紛争になったときに「合意内容の証拠」として機能する
  • 取引相手との認識を改めてすり合わせるきっかけになる

相手方が原本を持っている場合は「写し(コピー)の交付」も選択肢

一方で、相手方が原本を保管している場合は、そのコピーを交付してもらうことで対応できるケースもあります。ただし、コピーは「原本と同一内容であること」を確認できる状態であることが前提です。

電子契約で締結した契約書であれば、PDFデータをあらためて出力するだけで対応できる場合もあります。電子契約・電子署名の活用については別記事も参考にしてください。

なお、契約書・覚書の紛失を防ぐ保管方法も合わせて確認しておくと、今後のリスク対策に役立ちます。

紛失時の判断フロー(まとめ)

状況対応方法
相手方も原本を持っていない再作成(新たに契約書を締結し直す)
相手方が原本を保管しているコピーの交付を受けるか、再作成を検討
電子契約で締結済みPDFデータを再出力して対応できる場合あり

契約内容を変更したいとき:再作成 or 覚書、どちらが正解?

契約書の内容を変更したい場合、「再作成」と「覚書」のどちらが適切かは、変更の規模や性質によって異なります。以下の観点で判断しましょう。

覚書で対応すべきケース

以下のような場合は、既存の契約書に手を加えず、覚書で変更を記録するのが適切です。

  • 一部の条項だけを変更したい(例:単価・納期・支払い条件の変更)
  • 軽微な修正や補足を加えたい(例:担当者名・連絡先の変更、定義の明確化)
  • 合意内容をあらためて確認・記録したい(例:口頭で話し合った内容を書面化する)
  • 元の契約書の大部分が引き続き有効で、変更箇所が限定的
覚書を使うメリットは、手続きがシンプルで迅速に対応できる点です。変更内容だけを書面にすればよいため、全条項を見直す手間が省けます。

再作成すべきケース

以下のような場合は、契約書を一から作り直すほうが適切です。

  • 変更箇所が多すぎて、覚書と元の契約書を合わせて読むと非常にわかりにくくなる
  • 取引の基本的な枠組み・目的・当事者そのものが変わる(例:委託先の変更、事業内容の大幅な変更)
  • 元の契約書が古くなっており、法改正への対応が必要(特に2020年の民法改正以降の表現への見直し)
  • 元の契約書に問題のある条項があり、全体を整理し直したい
  • 相手方との信頼関係をリセットし、あらためて合意内容を確認したい
覚書を重ねていくと、「どの覚書が最新の合意内容か」「元の契約書と覚書の内容がどう整合するか」が煩雑になります。変更が多い場合は再作成のほうが、管理面でも法的明確性の面でも有利です。

変更規模による選択の目安

変更の規模・内容推奨する対応
1〜3条程度の軽微な変更覚書で対応
全体の3割以上の条項を変更再作成を推奨
取引の当事者・目的が変わる再作成が必要
法改正への対応が必要再作成を推奨
口頭合意の書面化・確認覚書で対応

覚書で対応する場合の書き方と文例

覚書を作成する際は、以下の要素を必ず盛り込みます。

覚書に必要な記載事項

  • 表題:「覚書」または「変更覚書」
  • 元の契約書の特定:いつ締結した何という契約書かを明示する
  • 変更内容:どの条項を、どのように変更するかを具体的に記載する
  • 発効日:変更が有効になる日付
  • 当事者双方の署名・押印

覚書の文例

変更覚書

○○株式会社(以下「甲」という。)と△△株式会社(以下「乙」という。)は、令和○年○月○日に締結した「業務委託契約書」(以下「原契約」という。)の一部について、以下のとおり変更することに合意する。

第1条(変更内容)
原契約第○条(委託料)を以下のとおり変更する。

(変更前)甲は乙に対し、毎月末日までに金○○円(税別)を支払う。
(変更後)甲は乙に対し、毎月末日までに金△△円(税別)を支払う。

第2条(その他)
本覚書に定めのない事項については、原契約の規定を引き続き適用する。

本覚書の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各1通を保有する。

令和○年○月○日

覚書作成時の注意点

  • 「原契約のどの条項を変更するか」を明確に特定する
  • 「変更前・変更後」の対比で記載すると、後から見たときにわかりやすい
  • 元の契約書と同じ形式(署名・押印の方法)に合わせると信頼性が高まる
  • 印紙税が必要になる場合があるので、内容に応じて確認する

再作成と覚書、どちらにするか迷ったときのチェックリスト

最終的に判断に迷ったときは、以下のチェックリストを使ってみてください。

以下に1つでも当てはまる場合は「再作成」を検討する

  • 元の契約書が手元にない(紛失・滅失)
  • 変更箇所が全体の3割を超える
  • 取引の目的・当事者・業務内容が根本から変わる
  • 元の契約書に不利な条項や問題のある条項がある
  • 法改正に対応した内容に見直す必要がある
  • 複数の覚書が積み重なり、現状の合意内容がわかりにくくなっている
以下にすべて当てはまる場合は「覚書」で対応できる
  • 元の契約書が双方の手元に存在している
  • 変更するのは一部の条項のみ(3条以下程度)
  • 元の契約書の基本的な枠組みは引き続き有効
  • 変更内容が明確で、覚書だけで変更点を特定できる

■まとめ

「再作成か覚書か」の判断をまとめると、以下のようになります。

  • 紛失した場合は再作成が基本。相手方が原本を持っている場合のみ、コピーや電子データでの対応も選択肢に入る
  • 一部条項の軽微な変更・補足・確認は覚書で対応できる。手続きがシンプルで迅速に動ける
  • 変更が多い・取引の枠組みが変わる・元の契約書に問題がある場合は再作成が適切
  • 覚書を重ねすぎると管理が複雑になるため、タイミングを見て再作成で整理し直すことも有効
どちらの対応が適切かは、契約書の内容や変更の規模によって異なります。「覚書で済ませてしまって大丈夫?」「再作成するとしたら何に気をつければいい?」といった疑問がある場合は、専門家に相談してみてください。

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