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電子契約にすると印紙税は不要?節約できる条件と注意点を解説

■はじめに

「契約書を交わすたびに、収入印紙の費用がかかって地味に痛い……」と感じたことはありませんか?

業務委託契約や請負契約、売買契約など、取引の数が多い事業者にとって、収入印紙の費用は積み重なると無視できない金額になります。契約1件あたり数百円から数万円、場合によってはそれ以上の印紙税が発生することもあります。

実は、電子契約に切り替えることで、この印紙税を合法的に節約できる場合があります。ただし、「電子契約にすればすべて印紙税ゼロ」というわけではなく、いくつかの条件と注意点があります。

この記事では、電子契約と印紙税の関係を法的根拠から丁寧に解説し、実際にどれくらい節約できるのか、導入時に気をつけるべきポイントも合わせてご説明します。


■本文

印紙税とは?まず基本を押さえましょう

印紙税とは、一定の「課税文書」を作成したときに課される税金です。契約書などに収入印紙を貼り、消印することで納税する仕組みです。

課税文書とは何か

印紙税法では、課税の対象となる「課税文書」として20種類の文書が列挙されています。ビジネス上よく登場するものとしては、以下のような文書が該当します。

  • 売買契約書・業務委託契約書・請負契約書などの「請負に関する契約書」(第2号文書)
  • 金銭消費貸借契約書などの「消費貸借に関する契約書」(第1号文書)
  • 領収書(第17号文書)
  • 不動産の売買・賃貸借に関する契約書(第1号文書)

これらの文書を「紙」で作成・交付すると、契約金額に応じた印紙税が発生します。

印紙税の詳しい基本については、こちらの記事「契約書と印紙税の基本」もご参照ください。


電子契約が印紙税不要になる法的根拠

印紙税法の「文書」は紙に限られる

電子契約が印紙税の課税対象にならない理由は、印紙税法の仕組みにあります。

印紙税法は、課税の対象を「文書」と定めており、この「文書」とは紙に記載されたものを指します。電子データ(電磁的記録)は、印紙税法上の「文書」には該当しません。

国税庁も、電子契約に関して次のような見解を明示しています。

電磁的記録(電子データ)は、印紙税法に規定する課税文書には該当しないため、印紙税は課税されません。

つまり、契約の締結から保存までをすべて電子データで完結させた場合、そもそも「課税文書(紙の文書)」を作成したことにならないため、印紙税が発生しないのです。

電子署名法との関係

電子契約が法的に有効であるためには、電子署名法に基づく電子署名が正しく機能していることが前提です。電子署名によって本人確認と改ざん防止が担保されることで、電子契約は紙の契約書と同等の法的効力を持ちます。

電子契約・電子署名の基本的な仕組みについては、こちらの記事「電子契約・電子署名とは」で詳しく解説しています。


印紙税が不要になる条件

電子契約で印紙税を節約するためには、以下の条件を満たす必要があります。

条件1:電子署名で完結していること

契約の合意・締結が電子署名によって完結しており、紙の書類を一切使用していないことが必要です。クラウド型の電子契約サービス(例:クラウドサイン、DocuSign、GMO電子印鑑Agreementなど)を使って、当事者双方が電子的に署名・合意する形式が該当します。

条件2:印刷物に署名・押印を加えて「契約の証明」として使わないこと

電子契約は、電子データのまま当事者間で締結・保存することで印紙税が不要になります。後から内容確認や控えのために紙に印刷するだけであれば、その印刷物は単なる写し(コピー)にすぎないため、課税文書には該当しません。

ただし、印刷した紙に改めて当事者が署名・押印を加えて、原本と同様に契約の証明として交付した場合には、その印刷物が「課税文書」として扱われる可能性があります。詳しくは後述の「注意点①」をご覧ください。

条件3:電子帳簿保存法の要件を満たした保存

電子契約書を電子データのまま保管する場合、電子帳簿保存法(電帳法)の要件に従った保存が必要です。適切な保存方法を守らないと、税務上のトラブルになる可能性があります。

電子契約書の保管・紛失リスクへの対策については、こちらの記事「AIで契約書を管理する時代の紛失対策」も参考にしてください。


注意点①:印刷物に署名・押印を加えて交付すると課税対象になり得る

「印刷したら一律に課税される」というわけではありません。ここは誤解されやすいポイントなので整理しておきましょう。

印刷しても課税されないケース(通常はこちら)

電子契約で締結した契約データを、内容確認・控え・社内資料として紙に印刷して保管することは、まったく問題ありません。印刷した紙は単なる写し(コピー)であり、契約の証明手段として機能するものではないためです。日常の運用で「念のため紙でも保管しておきたい」というケースは、ほぼここに該当します。

印刷物が課税文書として扱われる可能性があるケース

一方、次のような場合は、印刷物が「課税文書」として扱われる可能性があるため注意が必要です。

  • 印刷した紙に、当事者が改めて署名・押印を加えて相手方に交付した場合
  • 印刷した写しに「原本と相違ない旨」を記載し、署名・押印を加えて契約の証明として使用した場合

このような場合、印刷物が「契約の成立を証明する文書」として機能することになるため、印紙税法上の課税文書に該当する可能性があります。

電子契約で締結した契約を、後から書面契約と同じ効力を持つ形に切り替えるような運用をしない限り、通常は印紙税の課税対象にはなりません。電子契約の効率性・コスト面のメリットを活かすためには、電子データのまま保管・管理することを基本としつつ、必要に応じて写しとして印刷する運用が現実的です。


注意点②:すべての契約が電子化できるわけではない

法律上、書面(紙)や公正証書での締結が義務づけられている契約があります。こうした契約では電子化に制約が生じます。

電子化に制約があるケース

  • 事業用定期借地権設定契約:借地借家法23条により、公正証書によることが義務づけられています。電子契約のみでは締結できません
  • 保証契約(個人保証):民法446条により、書面によらない保証契約は無効とされます。ただし、民法446条第3項により、電磁的記録によって締結された保証契約は書面によるものとみなされるため、法的には電子化が可能です。実務上は相手方の対応状況を確認してください

民法第446条第2項
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。

民法第446条第3項
保証契約は、その内容を記録した電磁的記録によってされた場合において、その電磁的記録に記録された情報については、前項の書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。

書面・公正証書が必要かどうかは個々の契約類型・法律の規定によって異なります。電子化を検討する際は、その契約が電子化可能かどうかを事前に確認することが必要です。


注意点③:相手方が電子契約に対応していない場合

電子契約は、当事者双方が対応していなければ成立しません。取引先が電子契約ツールを導入していない、または電子署名に不慣れな場合は、電子契約への切り替えが難しいこともあります。

特に中小企業・個人事業主との取引では、相手方の対応状況を事前に確認し、必要に応じて説明・サポートを行うことが重要です。


電子契約に切り替えた場合の印紙税節約額の試算例

実際にどれくらい節約になるのか、具体的な例で見てみましょう。

業務委託契約(フリーランスへの発注)の場合

業務委託契約書(請負に関する契約書)の印紙税額は、契約金額によって異なります。

契約金額印紙税額(第2号文書)
100万円以下200円
200万円以下400円
300万円以下1,000円
500万円以下2,000円
1,000万円以下10,000円
5,000万円以下20,000円

たとえば、月50万円の業務委託契約を12件締結する事業者の場合:

  • 1件あたりの印紙税:2,000円
  • 年間12件 × 2,000円 = 年間24,000円の節約

請負金額が高額になるほど節約効果は大きくなります。1,000万円規模の工事請負契約であれば、1件あたり10,000円以上の印紙税がかかりますので、年間の契約件数が多い建設業・IT開発業などでは特に節約効果が顕著です。

売買基本契約書の場合

継続的な商品売買を行う事業者が交わす「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)の場合、契約金額に関わらず一律4,000円の印紙税がかかります。取引先ごとに契約書を交わしている場合、電子化するだけで年間の印紙税をゼロにできます。


電子契約導入時の実務的な注意点

電子契約への切り替えを検討する際は、以下の点も確認しておきましょう。

ツール選定のポイント

  • 電子署名法の要件(本人確認の確実性)を満たしているか
  • 電子帳簿保存法に対応した保存機能があるか
  • 取引先(相手方)が使いやすいインターフェースか
  • 導入コストとランニングコストが印紙税節約額を上回らないか

社内ルールの整備

  • どの契約を電子化対象とするか(電子化できる契約とできない契約の仕分け)
  • 電子契約書の保管・管理フロー
  • 紙への印刷を禁止する運用ルール

専門家への相談が有効なケース

電子契約と印紙税の関係は、一見シンプルなようで、個々の契約類型や取引の実態によって判断が変わります。以下のようなケースでは、専門家への相談をおすすめします。

  • 書面締結が必要な契約かどうか判断できない
  • 自社で使っている契約書が電子化可能かどうか確認したい
  • 電子契約書のひな型を整備したい
  • 取引先との契約書を電子化対応に見直したい

行政書士は、契約書の作成・レビューや各種手続きのサポートを行います。印紙税の個別の税務判断(課税・非課税の具体的な判定)については税理士・国税庁への確認が必要ですが、契約書の内容整備や電子化の手続き面については行政書士にご相談いただけます。


■まとめ

電子契約と印紙税の関係について、重要なポイントをまとめます。

  • 電子契約(電磁的記録)は印紙税法上の「文書」に該当しないため、原則として印紙税は課税されない
  • 印紙税不要の条件は、「電子署名で完結する」「印刷物を改めて契約の証明として使わない」「電子帳簿保存法に従って保存する」の3点
  • 単に内容確認や控えのために紙に印刷するだけでは課税されないが、印刷物に改めて署名・押印を加えて契約の証明として交付した場合は課税対象になり得る
  • 書面締結が法律上義務づけられている契約は電子化できないため、事前確認が必要
  • 相手方が電子契約に対応していない場合は、導入前に調整が必要
  • 取引件数・契約金額によっては、年間で数万円以上の印紙税節約が可能

電子契約への切り替えは、コスト削減だけでなく、契約書管理の効率化にもつながります。自社の契約実務に合わせて、段階的に電子化を進めることをおすすめします。


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