はじめに
「契約書のテンプレートをChatGPTで作ってもらいました」――そんな声を、最近よく耳にするようになりました。
ご依頼をいただく際にも、生成AIを使用してドラフト案を作成したというお声をよく伺います。
確かに、ChatGPTはそれらしい体裁の契約書をすぐに出力してくれます。コストもかからず、専門家に依頼する時間もない、というときに手軽に使えるのは魅力です。
しかし、ChatGPTが生成した契約書テンプレートをそのままビジネスに使ってしまうと、思わぬトラブルに発展するリスクがあります。この記事では、ChatGPTで作った契約書テンプレートを流用することの問題点と、安全に契約書を準備するための方法を解説します。
ChatGPTは「それらしい文章を生成する」ツールです
ChatGPTをはじめとする生成AIは、大量のテキストデータから学習し、質問に対して自然な文章を出力します。「業務委託契約書を作って」と入力すれば、それらしい体裁の契約書を生成することができます。
しかし、ここで重要なのは、ChatGPTが「それらしい文章を生成している」に過ぎないという点です。法律の専門家が内容を検証した上で作成しているわけではありません。文章として整っていても、法的に有効かどうかは別の話です。
ChatGPTテンプレート流用の5つの落とし穴
1. 法的に無効・不正確な条項が含まれる可能性がある
ChatGPTは法律の専門家ではありません。一見もっともらしい表現でも、法的に意味をなさない条項や、実際には効力が生じない規定が含まれることがあります。
たとえば、「いかなる場合にも損害賠償の責任を負わない」という免責条項は、民法の強行規定に反するケースがあり、無効と判断される可能性があります。免責が無効になれば、そのような条項を設けていた意味がまったくなくなります。
2. 最新の法改正に対応していない可能性がある
ChatGPTの学習データには更新の遅れがあります。2020年の民法改正では、「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に変更されるなど、契約書に関わる重要な改正がありました。古い表現をそのまま使った契約書は、解釈のズレやトラブルのもとになることがあります。
ChatGPTが出力したテンプレートが最新の法令に対応しているかどうか、自分では判断が難しいという点も大きなリスクです。
3. あなたのビジネスに合った内容にならない
ChatGPTが生成するテンプレートは、あくまで一般的な雛形です。業種・取引規模・相手先との関係性・リスクの所在など、個別の事情は一切反映されていません。
「一般的には問題ない条項」が、あなたのビジネスでは大きなリスクになることもあります。たとえば、成果物の定義が曖昧なままの業務委託契約書は、納品・検収のトラブルに直結します。
4. 重要な条項が抜け落ちることがある
プロンプト(指示)の内容によっては、必要な条項が含まれない契約書が出来上がることがあります。実務上、以下のような条項は必須とされますが、ChatGPTの出力では省略されることがあります。
- 秘密保持条項
- 解除条項(契約を終了できる条件)
- 管轄裁判所の合意
- 反社会的勢力の排除条項
- 損害賠償の範囲・上限の規定
こうした条項がないまま契約を締結すると、いざトラブルが起きたときに対応が難しくなります。
5. 問題が起きたときの責任はすべて自分に帰する
ChatGPTが作成したテンプレートを使って契約トラブルが起きた場合、その責任はすべてあなた自身に帰します。「AIが作ったから」は法的な免責事由にはなりません。
もちろん、専門家に依頼した場合も、契約当事者としての最終的な責任はあなた自身が負います。ただし、専門家の関与によってリスクを事前に把握・軽減できる可能性が高まり、トラブルそのものを未然に防ぎやすくなります。リスクを知らずに抱え込むか、知った上で判断するか――その違いが、専門家に相談する意義です。
こんな使い方なら参考になる
ChatGPTを契約書作成に活用することを完全に否定するわけではありません。以下のような「補助的な使い方」であれば効果的です。
- 契約書に含めるべき条項の項目出しの参考にする
- 法律用語や条項の意味を調べる入口として使う
- 大まかな構成や流れを把握するために参考にする
ただし、これらの使い方でも、最終的な内容は専門家に確認してもらうことが大切です。下書きとして使い、仕上げは専門家に、というイメージです。
安全に契約書を準備するための3つのステップ
契約書を安全に準備するためには、以下の流れが効果的です。
ステップ1:専門家に契約書の作成を依頼する
最初から専門家が作成することで、法的に有効な内容・あなたのビジネスに合った内容の契約書が完成します。ChatGPTのテンプレートを使うよりも、結果的にトラブルを防ぐことができます。
ステップ2:既存のテンプレートを専門家にレビューしてもらう
ChatGPTで作ったものを含め、既存のテンプレートがある場合は、専門家にリーガルチェックを依頼しましょう。問題箇所を洗い出し、修正した上で使うことで、リスクを大幅に減らすことができます。
ステップ3:別の取引にそのまま流用しない
過去に作った契約書を別の取引にそのまま流用することも、思わぬリスクのもとになります。取引の内容や条件が変わる場合は、その都度確認することをおすすめします。
まとめ
- ChatGPTは「それらしい文章を生成するツール」であり、法律の専門知識に基づいた検証はできない
- 法的に無効な条項・最新の法改正への未対応・重要条項の抜け落ちなど、具体的なリスクがある
- 下書きや項目出しの参考として使うのは有効だが、そのままビジネスに使うのは危険
- 重要な契約書は、専門家への作成依頼またはリーガルチェックを受けることが安全
大切なビジネスを守るためにも、契約書の作成・チェックは専門家にお任せください。
契約書の作成・レビューはお気軽にご相談ください
「自分で作れるか不安」「クライアントから送られてきた契約書を確認してほしい」という方は、専門家へのご相談をご検討ください。
はじま行政書士事務所では、フリーランス・副業の方向けの契約書作成(30,000円〜)および契約書レビュー(15,000円〜)を承っております。
なお、当事務所では以下の点をご説明した上で業務をお受けしています。
- 守秘義務:行政書士法により、業務上知り得た秘密を守る義務が課せられています。ご相談内容が外部に漏れることはありませんので、安心してご相談ください。
- 契約書の締結について:当事務所では、業務内容・報酬・支払条件等をメール等の書面で事前に明確にした上で業務を開始しております。単発案件が多い性質上、都度の契約締結は省略しておりますが、条件の透明性は必ず確保しております。
- 報酬について:原則として前払いでお受けしております。入金確認後に業務を開始しますので、依頼者様にとっても安心してご依頼いただける体制を整えております。
土日祝日も対応していますので、お気軽にご相談ください。

