■はじめに
「仕事を外部に頼みたいけど、契約書って何を書けばいいの?」「フリーランスに仕事をお願いするとき、どんな内容を盛り込めばいいのかわからない」と思ったことはありませんか?
業務委託契約書は、企業がフリーランスや個人事業主・他の会社に業務を依頼するときに結ぶ契約書です。きちんとした内容の契約書を用意しておくことで、後々のトラブルを大きく減らすことができます。
特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)や、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法)が施行されたこともあり、契約書の作成やレビューに関するご依頼で、最も多いのが業務委託契約書に関するご相談です。
今回は、業務委託契約書の基本と、盛り込んでおきたい必須記載事項をわかりやすく解説します。
■業務委託契約書とは
業務委託契約書とは、ある業務を外部の第三者に依頼する際に締結する契約書です。大きく分けると、以下の2種類があります。
請負契約
仕事の「完成」を目的とする契約です。たとえばWebサイトの制作やシステム開発など、成果物の納品が前提となります。成果物が完成して初めて報酬が発生するのが原則です。
準委任契約
仕事の「遂行(プロセス)」を目的とする契約です。コンサルティング業務や事務代行など、成果物の完成よりも業務そのものの実施に主眼が置かれます。
契約書のタイトルが「業務委託契約書」となっていても、どちらの形態をとるかによって、契約書に書くべき内容も変わってきます。
■業務委託契約書を作成するタイミング
「契約書は後でいいか」と後回しにしてしまうケースは意外と多いですが、業務委託契約書は業務開始前に締結しておくことが大原則です。
口頭での合意だけで業務を進めてしまうと、後から「そんな話はしていない」「報酬はいくらと聞いていた」といった認識のズレが生じやすくなります。特に以下のようなタイミングでは、必ず契約書を用意するようにしましょう。
- 新しい取引先と初めて仕事をするとき
- 継続的な業務を依頼・受注するとき
- 金額が大きい案件や、納品物が明確に存在する案件のとき
「信頼できる相手だから大丈夫」と思っていても、トラブルは信頼関係のある相手との間でも起こります。契約書は相手を疑うためのものではなく、お互いの認識を合わせるためのものという意識を持っておくことが大切です。
■業務委託契約書に必ず入れておきたい記載事項
1. 業務内容
何を依頼するのかを具体的に記載します。「業務全般」などのあいまいな表現は避け、できるだけ詳細に書くことが大切です。
2. 報酬額と支払条件
いくら、いつ、どのように支払うのかを明確にします。月末締め翌月払い、前払いなど、双方が合意した条件を具体的に記載します。
3. 納期・業務期間
業務の開始日・終了日、または納品期限を定めます。継続的な業務の場合は契約期間と更新条件も記載しておきましょう。
4. 再委託の可否
受注者がさらに別の第三者に業務を任せてよいかどうかを明記します。許可する場合は、事前承認を要件とするのが一般的です。
5. 秘密保持義務
業務を通じて知り得た情報を外部に漏らさないよう、秘密保持義務を定めます。取引上の重要情報が流出するリスクを防ぎます。
6. 知的財産権の帰属
制作物や成果物がある場合、著作権・所有権が依頼者(発注者)と受注者のどちらに帰属するかを明確にします。この点があいまいだと後に深刻なトラブルになることがあります。
7. 契約解除の条件
どのような場合に契約を解除できるかを定めます。一方的な解除を防ぐためにも、解除事由と手続きをしっかり記載することが重要です。
8. 損害賠償
業務上の不備やミスが生じた場合の損害賠償についてのルールを定めます。上限額を設ける場合はその旨も明記します。
■発注側・受注側それぞれの注意点
業務委託契約書は、発注する側と受注する側とで、それぞれ気をつけるべきポイントが異なります。
発注側(企業・個人事業主)が注意すべき点
- 業務内容をできるだけ具体的に記載する 「その他付随する業務」などのあいまいな表現は便利ですが、後から範囲が広がるリスクがあるため注意してください。依頼したい業務の範囲を明確に定めておきましょう。
- 知的財産権の帰属を明確にする 納品物の著作権が受注者側に残ったままになるケースがあります。制作物を自社で自由に使いたい場合は、契約書内で権利の譲渡または利用許諾を明記することが必要です。
- 再委託の制限を設ける 依頼した業務が無断で第三者に丸投げされるリスクがあります。再委託を認める場合でも、事前承認を条件とする旨を明記しておきましょう。
受注側(フリーランス・個人事業主)が注意すべき点
- 報酬・支払条件を必ず書面で確認する 口頭での合意だけでは、支払いが遅延・未払いになったときに対抗しにくくなります。金額・支払期日・支払方法を契約書に明記してもらうよう求めましょう。
- 業務範囲の拡大に注意する 契約締結後に「ついでにこれもお願い」と追加業務を求められるケースがあります。契約書に記載のない業務については、別途合意・追加報酬の対象となる旨をあらかじめ確認しておくと安心です。
- 契約解除・途中終了の条件を確認する 突然の契約打ち切りによる収入リスクを避けるため、解除予告期間や未完了業務の報酬についても契約書で取り決めておきましょう。
■基本契約書と個別契約書の違い
継続的な取引をする場合、毎回一から契約書を作成するのは手間がかかります。そこでよく使われるのが、基本契約書と個別契約書を組み合わせる方法です。
基本契約書とは
取引全体に共通して適用されるルールをまとめた契約書です。秘密保持義務・知的財産権の帰属・損害賠償・契約解除の条件など、取引のたびに変わらない事項を定めます。一度締結しておけば、個別の案件ごとに同じ内容を繰り返し記載する必要がなくなります。
個別契約書(発注書・注文書)とは
案件ごとに異なる内容——業務内容・報酬額・納期など——を定めるための書類です。基本契約書と組み合わせて使うことで、契約締結の手間を大幅に省くことができます。
使い分けのポイント
単発の案件であれば、すべての事項を盛り込んだ1枚の業務委託契約書で対応するのが一般的です。一方、同じ取引先と継続的・反復的に取引する場合は、基本契約書+個別契約書の形式が効率的です。
なお、基本契約書と個別契約書の内容が矛盾する場合にどちらを優先するかについても、あらかじめ契約書内に定めておくと安心です。
■業務委託契約書に収入印紙は必要?
「業務委託契約書を紙で作成するとき、収入印紙は必要?」というご質問をよくいただきます。
結論からいうと、契約の種類によって異なります。
請負契約の場合
請負契約書は印紙税法上の課税文書(第2号文書)に該当するため、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。たとえば契約金額が100万円超200万円以下であれば400円、1,000万円超5,000万円以下であれば1万円の印紙が必要になります。
準委任契約の場合
準委任契約書は原則として課税文書に該当しないため、収入印紙は不要です。ただし、契約書の内容によっては課税文書と判断される場合もあるため、判断に迷う場合は専門家に確認することをおすすめします。
電子契約の場合
電子契約(PDF等のデータで締結する場合)は、請負契約であっても収入印紙は不要です。これは印紙税法上、課税対象となるのが「紙の文書」に限られるためです。契約金額が大きい案件では、電子契約にするだけで印紙税のコストを削減できるメリットがあります。電子契約についてはこちらの記事もあわせてご覧ください。
■まとめ
業務委託契約書を作成する際のポイントを整理します。
- 請負契約と準委任契約のどちらかを明確にする
- 業務内容・報酬・期間はできるだけ具体的に記載する
- 知的財産権の帰属と秘密保持義務は必ず盛り込む
- 契約解除・損害賠償のルールもあらかじめ決めておく
業務委託契約書は、取引の土台となる重要な書類です。「なんとなく」で作成したり、相手に提示されるがままに締結してしまうと、後から認識の相違によるトラブルになりかねません。ぜひ専門家に相談しながら、しっかりとした契約書を整えておきましょう。
契約書の作成・レビューはお気軽にご相談ください
「自分で作れるか不安」「クライアントから送られてきた契約書を確認してほしい」という方は、専門家へのご相談をご検討ください。
はじま行政書士事務所では、フリーランス・副業の方向けの契約書作成(30,000円〜)および契約書レビュー(15,000円〜)を承っております。
なお、当事務所では以下の点をご説明した上で業務をお受けしています。
- 守秘義務:行政書士法により、業務上知り得た秘密を守る義務が課せられています。ご相談内容が外部に漏れることはありませんので、安心してご相談ください。
- 契約書の締結について:当事務所では、業務内容・報酬・支払条件等をメール等の書面で事前に明確にした上で業務を開始しております。単発案件が多い性質上、都度の契約締結は省略しておりますが、条件の透明性は必ず確保しております。
- 報酬について:原則として前払いでお受けしております。入金確認後に業務を開始しますので、依頼者様にとっても安心してご依頼いただける体制を整えております。
土日祝日も対応していますので、お気軽にご相談ください。

