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契約書・覚書の紛失を防ぐ保管方法|紙・電子それぞれの実務ポイントを解説

■はじめに

「あの契約書、どこに保管していたかな?」——いざ必要になったとき、契約書や覚書がすぐに取り出せず、慌てた経験はありませんか?

契約書は、取引の内容や双方の権利義務を証明する大切な書類です。紛失してしまうと、実務上の手順の確認ができないだけでなく、後々のトラブル対応や税務調査、裁判での立証などで不利益を被る可能性があります。にもかかわらず、「とりあえずキャビネットに入れている」「担当者の机の引き出しに入れたまま」という状態のまま、管理ルールがあいまいになっているケースは少なくありません。

この記事では、契約書・覚書の保管期間の基本的な考え方から、紙・電子それぞれの保管のポイント、紛失リスクを減らすための具体的な工夫まで、実務目線で解説します。なお、すでに契約書を紛失してしまった場合の対応については、別記事「契約書を紛失してしまった時の対応」で解説していますので、そちらもあわせてご覧ください。

契約書の保管期間|法律で求められている期間の目安

契約書や覚書をいつまで保管しておくべきかは、関連する法律によっておおよその目安が決まっています。実務でよく問題になるのは、次のような区分です。

法人税法上の保管義務

法人税法では、帳簿書類や取引に関する契約書・領収書などについて、原則として7年間の保存が義務づけられています。さらに、欠損金の繰越控除を受ける場合などは、10年間の保存が必要になるケースもあります。

そのため、税務との関係では「最低でも7年、状況によっては10年」という意識で保管しておくと安心です。

会社法上の保管義務

会社法では、会計帳簿や事業に関する重要書類について、10年間の保存が求められています。契約書もその一部として、10年保管を基本に考える企業が多くあります。

個別の法律による保管期間

下請取引・建設業・労働関係など、個別の法律で別途の保管期間が定められている場合もあります。業種ごとに上乗せルールがあるため、「自社の業務にどんな法律が関係するか」を一度整理しておくことが大切です。

実務上は、「契約終了から最低10年」を目安に保管しておけば、多くのケースで問題になりにくいといえます。重要な契約や、長期にわたって権利義務が続く契約(不動産・知的財産・継続的取引基本契約など)は、さらに長期間の保管を検討しましょう。

紙の契約書を保管するときのポイント

紙の契約書には、押印された原本ならではの重みがあります。一方で、物理的な紛失・劣化・盗難のリスクもあるため、いくつかの工夫が必要です。

台帳管理で「どこに何があるか」を見える化する

紙の契約書を紛失する一番の原因は、「どこに何があるか分からなくなること」です。これを防ぐためには、契約書の原本管理台帳を作成することが効果的です。

台帳に記録しておきたい主な項目は次のとおりです。

  • 契約書の件名・タイトル
  • 契約当事者(相手方の名称)
  • 契約締結日・契約期間
  • 保管場所(キャビネット番号・棚番号など)
  • 担当部署・担当者
  • 関連する覚書・変更契約の有無

Excelやスプレッドシートで一覧化しておけば、検索性も高まり、退職や担当変更があってもスムーズに引き継ぎができます。覚書や変更契約がある場合は、元の契約書とひも付けて記録しておくのがポイントです。覚書の基本については、別記事「変更覚書・追加覚書とは?」もあわせて参考にしてください。

施錠・耐火・持出記録などの物理管理

紙の契約書は、物理的なリスクから守る必要があります。具体的には、次のような対策が有効です。

  • 施錠できるキャビネット・書庫に保管する
  • 耐火金庫や耐火書庫の活用を検討する(特に重要契約)
  • 契約書を持ち出す際は「持出記録簿」に記録を残す
  • 持ち出した契約書は、その日のうちに必ず元の場所へ戻すルールを徹底する

特に「ちょっとコピーするだけ」と持ち出した契約書が、机の上に置きっぱなしになり、いつの間にか行方不明になる——というケースは実務でも珍しくありません。

スキャンしてバックアップを取る

紙の契約書は、火災・水害・盗難などで一瞬にして失われるリスクがあります。そのため、契約書を締結したら速やかにスキャンし、PDFデータとしてバックアップを取っておくことを強くおすすめします。

スキャンデータは、社内サーバーやクラウドストレージに保管し、紙の原本とは別の場所に置くことで、リスク分散になります。

電子契約・電子保管のメリットと注意点

近年は、契約書を最初から電子契約として締結したり、紙で締結した契約書をスキャンして電子データで保管したりする企業が増えています。電子化には、紛失リスクを減らす大きなメリットがあります。電子契約そのものについては、別記事「電子契約・電子署名とは?」で詳しく解説しています。

電子保管の主なメリット

  • 検索性が高い:契約相手・締結日・キーワードなどで瞬時に検索できる
  • バックアップが容易:複数のサーバー・クラウドに自動でバックアップできる
  • 改ざん防止:電子署名・タイムスタンプによって、改ざんの有無を証明できる
  • 物理スペースが不要:書庫やキャビネットに頼らずに済む
  • 持出記録も自動化:誰がいつ閲覧・ダウンロードしたかをログで管理できる

電子帳簿保存法の要件に注意する

電子契約や、紙の契約書をスキャンして電子保管する場合には、電子帳簿保存法のルールにも目を配る必要があります。一般的には、次のような要件への対応が求められます。

  • 真実性の確保(タイムスタンプ・訂正削除履歴の保存など)
  • 可視性の確保(検索機能・ディスプレイでの速やかな出力など)
  • 保存期間中、所定の方法で保存し続けること

要件の細かい内容は改正もあるため、自社の状況に応じて、税理士や顧問専門家と相談しながら社内ルールを整備していくとよいでしょう。

電子データならではの注意点

電子化にもリスクはあります。たとえば、次のような点には注意が必要です。

  • データの保存先(サーバー・クラウド)の障害・サービス終了リスク
  • パスワード・アカウント情報の管理ミスによるアクセス不能
  • 退職者のアカウント整理が遅れて、不要なアクセスが残ってしまう
  • 端末の故障・紛失によるデータ消失

「電子化したから安心」ではなく、バックアップ先を分散させる・アクセス権限を定期的に見直すといった運用ルールが欠かせません。

紛失リスクを減らす5つの工夫

ここまでの内容を踏まえ、契約書の紛失リスクを下げるために有効な5つの工夫をまとめます。

1. 双方1部ずつ保管する原則を守る

契約書は、当事者双方がそれぞれ原本を1部ずつ保管するのが基本です。「相手が持っているから自社にはコピーだけでよい」という運用は、紛失や紛争時のリスクが高くなります。署名・押印した原本を、必ず自社でも1部保管しましょう。

2. 台帳で一元管理する

契約書ごとに保管場所がバラバラだと、必要なときにすぐ取り出せません。台帳(紙でもエクセルでも可)で一元管理し、「タイトル・相手方・保管場所」を必ず記録しておきます。

3. クラウドストレージへのバックアップ

紙の原本があっても、必ずスキャンしてクラウドや社内サーバーにもバックアップを取ります。原本紛失時の「内容証明」としても役立ちます。

4. 保管期間ごとに色分け・区分する

契約書ごとに保管期間が異なる場合、ファイルやフォルダを年度・契約終了年で色分け・区分しておくと、不要になった契約書の処分判断もスムーズです。誤って必要な契約書を破棄してしまうリスクも減ります。

5. 退職者・担当変更時の引継ぎルールを整える

契約書管理は、担当者の頭の中だけで運用していると、退職や異動の際に一気にブラックボックス化します。引継ぎ時には、台帳・保管場所・電子データのアクセス権限を、後任者と一緒に確認するルールを設けておきましょう。

行政書士に相談できる「契約書管理体制」のポイント

「自社の契約書管理が、本当にこれで大丈夫なのか不安」「台帳のひな型を整えたい」「電子契約の導入と社内ルールの整備を一緒に進めたい」——そんな場面では、行政書士に相談することも一つの選択肢です。

行政書士は、契約書の作成・確認に加え、契約書管理に関する一般的なルール作りや、社内規程・ひな型の整備をサポートできます。たとえば、次のような相談に対応できます。

  • 契約書管理台帳のひな型の整備
  • 契約書・覚書の保管ルール(紙・電子)の社内規程作成支援
  • 既存契約書の棚卸しと、保管状況の整理
  • 電子契約導入時の社内手続きの整備

また、最近では紙や電子の契約書をまとめて保管・管理してくれるサービスも増えてきています。弊所では企業法務での導入経験を活かして、契約書保管・管理サービスの導入に関するご相談・サポートも承っております。

なお、税務上の保存要件の細部については税理士、訴訟や紛争を見据えた具体的な対応については弁護士の領域となります。複数の専門家と連携しながら進めていくのが現実的です。

■まとめ

契約書・覚書の保管方法のポイントを整理します。

  • 契約書の保管期間は、法人税法・会社法などの観点から、契約終了後10年程度を目安に考えると安心
  • 紙の契約書は、台帳管理・施錠保管・持出記録・スキャンバックアップの4点で物理リスクを減らす
  • 電子契約・電子保管は、検索性・バックアップ・改ざん防止に強みがある一方で、電子帳簿保存法の要件やアクセス権限管理に注意が必要
  • 紛失リスクを下げる基本は、双方1部ずつ保管・台帳での一元管理・クラウドバックアップ・保管期間ごとの区分・引継ぎルールの整備の5点
  • 担当者任せにせず、社内ルールとして仕組み化することが、長期的な紛失防止につながる

契約書の保管は、地味ですがトラブルを未然に防ぐ大切な実務です。「気づいたらどこにあるか分からない」という状態を作らないために、今日から少しずつ整理を始めてみてはいかがでしょうか。

契約書の作成・管理体制の整備、体制の構築でお困りの際は、ぜひはじま行政書士事務所へご相談ください。


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