はじめに
「この条項の意味がよくわからないので、ChatGPTに聞いてみた」――契約書を読んでいてわからない部分が出てきたとき、AIに解説を求める方も多いのではないでしょうか。
確かに、難解な法律用語や長い文章を噛み砕いて説明してもらえるのは便利です(私もよく聞いています 笑)。しかし、AIの解説をそのまま信じてしまうと、重大な判断ミスにつながるリスクがあるので注意が必要です。
この記事では、生成AIに契約書の条項を解説させるときに知っておくべき注意点を解説します。
生成AIに「解説」を求めることの広がり
ChatGPTやCopilotなどの生成AIは、複雑な文章を平易に説明することが得意です。そのため、以下のような使い方が広がっています。
- 難解な法律用語の意味を聞く
- 長い契約書の条項を「簡単に言うと?」と聞く
- 「この条項にはどんなリスクがある?」と分析を求める
- 「自分にとって有利か不利か」を判断させる
こうした使い方は、法律の専門知識がない方にとって非常に魅力的です。しかし、ここには見落としがちな落とし穴があります。
注意すべき4つのポイント
1. AIの解説は「一般論」に過ぎない
AIが提供する解説は、あくまで一般的な法律知識に基づくものです。あなたの具体的な契約内容・取引の背景・相手方との関係性・業界の慣行など、個別の事情は一切考慮されません。
たとえば、「損害賠償の上限を設けるこの条項はリスクがありますか?」と聞いても、AIは一般的な観点での回答しかできません。あなたの業種・取引規模・過去の経緯などを踏まえた具体的な判断は、AIには行えないのです。
2. 解説の正確性を自分で検証できない
AIは自信を持って誤った情報を提示することがあります(いわゆる「ハルシネーション」)。法律の条文番号・判例の内容・改正後の規定などについて、事実と異なる情報を正確であるかのように説明することがあります。
法律の専門知識がない方がAIの解説の正確性を判断するのは難しく、誤った情報をそのまま信じてしまうリスクがあります。
3. 「リスクなし」の解説が正しいとは限らない
AIが「この条項は一般的なもので、特に問題はありません」と回答したとしても、それがあなたの取引において本当に問題がないとは言えません。
法律のグレーゾーンへの対応・業界慣行に照らした解釈・相手方との交渉上の問題など、AIでは把握できない要素が多数あります。「AIがOKと言ったから」というだけで、問題ないと判断するのは危険です。
4. 最新の法改正が反映されていない場合がある
AIの学習データには更新の遅れがあります。2020年の民法改正・2022年の個人情報保護法改正・2024年施行のフリーランス保護新法など、近年の重要な法改正が反映されていない回答が返ってくることがあります。
特に、改正前後で意味が大きく変わる条項については注意が必要です。
最近ですと、2026年1月から施行された取適法(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」)については、誤った情報が提示されることが多いです。
生成AIを上手に活用するための使い方
生成AIに契約書を解説させることを完全に否定するわけではありません。以下のような活用方法であれば、リスクを抑えながら使うことができます。
入口として使う(そこで止まらない)
AIの解説を「この条項はこういう意味かもしれない」という理解の入口として使い、最終的な判断は自ら調査したり、専門家に確認する、という使い方は有効です。
疑問点を整理するのに使う
「この条項のどこが気になるか」をAIとの対話を通じて整理し、専門家への相談内容を明確にするという使い方も効果的です。
法律用語の大まかな意味を調べるのに使う
「瑕疵」「損害賠償」「反社条項」など、法律用語の大まかな意味を理解するための補助ツールとして使うのは有用です。
AIの解説を受けた後のおススメの判断プロセス
AIの解説をもとに、次のステップで判断することをおすすめします。
- AIの解説を「仮説」として受け取る:「おそらくこういう意味だろう」という仮説を立てる材料として使う
- 気になる点をリストアップする:AIの解説を聞いて「これは問題かもしれない」と感じた箇所を書き留める
- 確認する:リストアップした疑問点を持って、専門家に相談する。または、自らソースを調査する
特に金額が大きい・長期にわたる・初めての種類の契約については、AIの解説だけで判断せず、自ら調査するほか、専門家に確認することをおすすめします。
まとめ
- 生成AIに契約書の条項を解説させることは手軽だが、「一般論」に過ぎず個別の事情は考慮されない
- AIの解説の正確性は自分では検証しにくく、誤情報を信じるリスクがある
- 「AIがOKと言ったから安全」という判断は危険
- AIは理解の入口・疑問点の整理に活用し、最終的な判断は裏付けをとるのが安全
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「自分で作れるか不安」「クライアントから送られてきた契約書を確認してほしい」という方は、専門家へのご相談をご検討ください。
はじま行政書士事務所では、フリーランス・副業の方向けの契約書作成や、契約書レビューを承っております。
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