リーガルチェックは、契約書や覚書を法的観点から検証・チェックするプロセスです。
契約は、契約自由の原則(民法521条)に基づいて自由に契約できる一方で、法令の定めや制限を遵守しなければなりません。法律に違反したり、制限を超える内容が契約書に含まれていると、契約の一部または全部が無効になる場合があります。
さらに、合法性に問題がなくても、片方に著しく不利な条項や内容の不整合がある場合には、将来のトラブルを招く可能性があります。
リーガルチェックは、これらのリスクを防ぐために専門家や法務部門が実施します。将来のトラブルを予防し、契約書の意味を失わせたり、問題の原因となることを避けるために必要なプロセスといえるでしょう。
リーガルチェックは、以下のような点に注意して実施します。
1.内容の整合性がとれているか
契約書は特定の内容に関するルールブックです。内容に不整合があると、ルールブックとしての役割を果たすことはできませんし、契約に対する信頼性が損なわれてしまいます。
先ずは契約書全体を通読し、不整合や矛盾した内容がないかを確認します。
2.不明瞭な記述がないか
契約書は契約内容を証拠として残すものなので、不明瞭だったり、あいまいな記述は極力排除します。特に、用語や権利義務は、誤解が生じやすい部分です。読む人によって解釈がが異ならないように、できる限り明確に定義することが必要です。
一般的な文書では、余白を遺すために「など(等)」も多用されますが、誤解につながりやすい表現なので注意が必要です。
3.強行法規に違反していないか
法律には強行法規(強行規定)と呼ばれる、強制的に適用される内容があります。強行法規は当事者の意思によって変更することが許されないため、違反する記述内容は無効となります。
民法や利息制限法、労働基準法、借地借家法など、様々な法律に強行法規が存在するため注意が必要です。
4.公序良俗に違反する内容はないか
公序良俗違反を無効とする規定(民法90条)は強行法規ですが、何が公序良俗に反するかは難しい判断です。
公序良俗に違反するかどうかは、判例や学説などを確認するほか、必要があれば弁護士への相談も必要となります。
5.不利な条項はないか
一方的に不利な条項がないかについても、十分な確認が必要です。一方的に義務を負わせるような内容はわかりやすいですが、特定の条件を満たすと発動する義務は、さりげなく記載されていることが多いように思います。
契約締結後の内容変更は双方の合意が必要となり、有利な側が快く変更に応じてくれるとは限りません。予め注意しておく必要があります。
6.一般条項に不足はないか
一般条項とは、一般的なトラブル防止のための条項のことです。契約の目的そのものではないため、必須ではありません。しかし、万が一のトラブルを想定して、必要と思われる一般条項は入れておくべきです。
例えば、天災等の不可抗力が発生したときや、相手が反社会的勢力等であったとき、裁判になったときの合意管轄に関する条項などがあります。
7.契約の目的が達成できる内容となっているか
契約書を作成する際には、何のために契約を締結するのかを明確にし、その目的を達成できる内容にすることが大前提です。
内容が不十分である場合は補完し、合法性や整合性に問題がある場合は修正しますが、合法的で整合性がとれていたとしても、契約目的が達成できなければ意味がありません。
手段に集中して、目的を忘れるようなことがないように気を付けます。
8.抜け穴がないか。
契約書は様々なトラブルを想定して作成します。想定される状況に抜け漏れがないかを確認し、必要に応じて対応する条項を追加します。
想定できない状況が発生した際に解決する方法を決めておくことも、一つの手段です。
リーガルチェックは、契約トラブルを未然に防ぐための有効な手段です。
契約の内容や重要度に応じて、行政書士や弁護士などの専門家に相談しながら進めると良いでしょう。
民法90条
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。