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公正証書とは。私署証書との違いやメリット

公正証書というのは私人(個人や法人)からの依頼により、公証人が作成する公文書(省庁や公務員などが職務上作成した文書)のことです。ちなみに、一般的に作成される契約書は私署証書といわれ、私文書(作成者の署名押印や記名押印のある、個人や法人(会社)の作成した文書)といわれます。

公正証書は、以下のような点で私署証書とは異なる特徴があります。

1.信用力が強い

公正証書も私署証書も、証拠という点では同じです。しかし、一般的に私人間で作成された私署証書よりも、公的な立場の第三者(公証人)によって作成された公正証書のほうが、信用力が高い傾向にあります。

2.裁判を経ずに強制執行が可能(※)

通常、強制執行を行う場合は、民事執行法22条に定められている債務名義を取得する必要があります。債務名義を得るためには、契約書などを証拠として裁判を提起して、勝訴判決を得るなどの手続きを経る必要があり、契約書があるからといって、すぐに強制執行が行えるわけではないのです。

ところが、公正証書の中でも(1)金銭の支払等を目的とする請求に関する公正証書で、(2)債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているものは、執行証書(強制執行認諾文言付公正証書)と呼ばれ、裁判などの手続きを経なくても、この公正証書のみをもって強制執行が可能となっています(民事執行法22条5項)。

※執行証書は「金銭の支払いを目的とする請求」に限定されているため、それ以外の「物の引き渡し」などについては作成することができません。

3.検認手続きが不要

相続の開始において、遺言書が残されていた場合には、開封する前に、速やかに家庭裁判所において検認の手続きをする必要があります。
「検認」というのは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らせるとともに、遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名などの状態を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。

※検認を経ないことで、遺言書が無効になるということではありませんが、所有権移転登記や銀行での手続きなどの際に証拠書類として認められません。その場合は、相続人全員の合意による遺産分割協議書の作成が必要となります。

この検認の手続きは「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」において必要となりますが、遺言書を「公正証書遺言」の形で作成した場合には、不要となります。公正証書遺言は公証人が遺言書を書き、公証役場で保管されているため、遺言書が偽造・変造される恐れがないために、検認手続きが必要ないのです。

ちなみに2020年(令和2年)7月から、自筆証書遺言を法務局の遺言保管所で保管する「自筆証書遺言書保管制度」が始まっており、この制度を使用した場合も偽造・変造の恐れがないため、検認は不要です。

4.公正証書でなければならない契約

契約自由の原則(民法521条)に基づき、契約の内容や形式は自由に決められることになっていますが、これには「法令に特別に定めがある場合を除き」という制限がつけられています。事業用融資に対する個人の保証契約事業用定期借地契約などは、契約書を公正証書で作成しなければ効力発生が認められません。

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(債務名義)
民事執行法22条5項
 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

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